リーグ・オブ・レジェンドはチームの勢いがある程度、勝敗に結び付くゲームです。

チームの勢いは、チームの士気から作られます。

チームの士気は、個人のプレイヤーから作られます。

LOLでは試合に負けているとしても、チームの中に、キルを稼いでいるプレイヤーが一人いると頼もしく感じます。

そして、キルを稼いでいる本人も少なからず「俺がキャリーしたらんとなあ。こんだけキル持ってるし」と思うケースは多いと思われます。

実は、勝っているプレイヤーは場合と状況により味方の士気を上げますし、逆に下げることがあります。そして最悪なことに、敵の士気上げてしまうことすらあります。

なぜ、そのようなことになるでしょうか?それには、すりこみが関係しています。


すりこみとは

すりこみとは、初対面で出会った人の第一人称が、長期に渡ってその人のイメージとして保持される、という現象です。

アメリカの心理学者ソロモン・アッシュ博士が実験で実証しています。実験は下記のようなものです。

  • 2つの異なるグループがある
  • それぞれのグループに、ある人物の特徴を伝えた
  • 最初のグループには、好印象の人物を、しかしその後、その人物について批判を行った
  • 後者のグループには、悪印象に人物を、しかしその後、その人物は皆に好かれている事を伝えた
  • 上記は、同じ人物像の特徴を逆に伝えただけである

簡易的な説明ですが、以上のような実験を行った結果、驚くべきことに好印象から伝えられた最初のグループは、その人物について「この人は性格がいいし、人当たりもいいけど、多少誤解される部分もある」と述べました。

悪印象から伝えられた後者のグループは、その人物について「この人はあまりいい人じゃないし、人を騙しているかもしれない」と述べました。

最初に良い情報を伝えられたグループは、好印象を抱き、良くない情報を先に伝えられたグループは悪印象を抱く結果となりました。

この実験結果から、アッシュ博士は最初に入った情報の方が、記憶として長期に渡って定着する、という心理現象を実証しました。

アッシュ博士は社会心理学を発展させた心理学者として知られていて、他にも同調現象を実証しています。

同調現象とは、社会心理学の用語で、社会に適用している行動に従い、大多数の人の意見や行動に順応していくことを言います。
四天王制を断ち切れ!同調現象とは

さて、LOLでは例えば最初にキルを取ったプレイヤーに対して「あ、うまいのかあいつ?」という印象を抱いた経験はありませんか?

LOLは捻くれたプレイヤーが多いので、恐らく、キルを取ったのが味方だった場合は「敵が下手だったんだろうな」と思い、敵のキルだった場合は「味方がごみすぎんよお!」と思うでしょう。

ちなみに自分が最初のキルを取った場合は「俺様やっぱうますぎんご!」と思うプレイヤーも多いでしょう。


最初のキルは、LOLではファーストブラッドという名前で呼ばれ、キルから獲得できる資金にボーナスがつくほど特別なものです。それ故に、ファーストブラッドが味方や敵に与える印象というのは他のキルよりも大きい傾向があります。

LOLは即席のチームで試合を行うことが多く、味方の実力が未知数だったりします。

そしてファーストブラッドの発生は、ファーストブラッドのキルを取ったプレイヤーから他のプレイヤーに対するすりこみとして働きます。

「あいつ・・・ファーストブラッド取りやがった・・・!うまい!?」

実際に上手いか下手だったかは別として、他のプレイヤーはファーストブラッドを取ったプレイヤーに対して何らかの印象を抱くでしょう。

味方であれば、頼もしさ。敵であれば、畏怖や警戒だと思われます。

私の経験では、ファーストブラッドに対する印象は小規模な集団戦が発生するまでプレイヤーの記憶に残っています。集団戦が始まる中盤以降は、他に考えることが多いせいか、試合が終わる頃には誰がファーストブラッドを取ったのか忘れている場合も多いでしょう

さて、このファーストブラッドによるすりこみ効果ですが、試合の序盤にかけては対面相手に十分なプレッシャーを与えることが出来ます。

それはどのようにすればいいのか?簡単です。

それは、ファーストブラッドを取った人がデスしないことです。

ファーストブラッドを取った人によるすりこみは、それ同等以上の事実で記憶を塗り替えない限りは、限りなく有効です。

つまり、ファーストブラッドを取ったにも関わらず、その後デスをしたら逆に相手を勢いづかせることになります。

「ファーストブラッドあいつ取ってビルド先行してるにも関わらず、俺たちはあいつを倒しました!俺たちさいきょおおおおお!流れきてるよおお!乗るしかないこのビッグウェーブに!」

このように、相手を勢いづかせることになります。

なので、あなたがもしファーストブラッドを取っている場合、とても慎重になりましょう。なぜなら、あなたがデスするということは、味方の士気を下げ、敵の士気を上げることになるからです。

ファーストブラッドを取っているプレイヤーは、LOLでは明確に、誰でもわかる先行の有利です。有利を効果的に活かしてこそ、あなたのファーストブラッドは本来持つ価値以上に働きかけさせることができます。

100の価値のものを、100以上に発揮させることができればあなたは間違いなく同レートのプレイヤーよりも有利を作れるプレイヤーになるでしょう。そして、それを可能にするのが心理学です。

他のレーンの敵にも影響を与え、味方の士気を上げることは試合の有利に直結します。しかし、それに反して慎重さを欠けば、逆効果にもなります。

勝っている時こそ慎重に、作った有利を崩さずに最後まで貫くことができれば勝率も自然と上がっていくことでしょう。

余談ですが、本記事で記載したソロモン・アッシュ博士は社会心理学を発展させた心理学者として知られています。

社会心理学は、人間と社会に対する洞察を含み、ビジネスの現場ではよく実用されます。そして、ビジネス書には様々な社会心理学を取り入れた著書も多いです。

興味がある方が、割とガチな著書である下記がお勧めです。

「ビジネスには、人間と社会に対する深い洞察が欠かせない。その意味で、本書は疑いなく、今年度最高のビジネス書の1冊であると考える。」
誠ブログ2013/8/29

一般のビジネス書は、実用的なものが多く、その裏側にある社会心理学まではあまり解説しません。この本は、裏側である社会心理学の解説をしたものです。上記を読んでからビジネス書を読むと、「あぁ、これはあの社会心理学のことから発展してるわけだな」とわかるようになるでしょう。